平成28年6月16日・17日の2日間、「愛知の醸造・発酵文化と郷土の食材、料理の探訪」をテーマに、技・知恵部会、普及・啓発部会共催 視察・研修ツアーが実施されました。
移動の車中において普及・啓発部会、技・知恵部会の第一回部会がそれぞれ行われました。昼食後には両部会長によるミニ講演会開催、一日目の終わりには懇親会も行われ、参加会員の知識の向上と各訪問先との交流、及び参加者相互の懇親を深める機会となりました。
各部会、ミニ講演会等の内容は以下の通りです。
【ツアー訪問先】
(1日目)
① 岡崎 カクキュー様
② 大正庵 釜春様 (ミニ講演会、昼食)
③ 西尾 あいや様
④ 角谷文治郎商店様
⑤ 日東醸造様
⑥ 小判天様 (夕食、懇親会)
(2日目)
⑦ 半田 MIZKAN MUSEUM様
⑧ 半田 おとうふ湯葉いしかわ様 (昼食)
⑨ 武豊 南蔵商店様
⑩ 大府 げんきの郷様
【各部会次第】
1.第一回 普及・啓発部会
10:50 開会・挨拶 部会長:伏木 亨
11:00 事業計画について 事務局:原 滋典
2.第一回 技・知恵部会
11:10 開会・挨拶 部会長:村田 吉弘
11:20 事業計画について 事務局次長:田島 寛
【ミニ講演会内容】
1.テーマ:「なぜ和食文化の保護・継承が必要なのか」
技・知恵部会長 村田 吉弘
・我国の人口は12600万人、50年後には8000万人になり、その頃はアジアの経済成長は終わっている。またインド、アフリカで人口爆発が起きている。
・我国の食料自給率は39%。このままいけば50年後は19%になる。何故、和食を文化遺産に登録する必要があったのか?自国民が和食を食べるようにしないと自給率は本当に19%になってしまう。その時、60歳以上の人口は40%、働き出す前の人口が30%、残り30%の人が70%の人を食べさせなければならない国になっている。鎖国の時代は自給率100%であった。飢えで死ぬ人はいなかった。独立国でいられた大きな理由でもある。50年後の為にどうすればよいか。我国は山紫水明の国である。北海道から沖縄まで、飲める軟水が豊富に出る。米も出来る。米と水で酒を作り、米を水で炊いて飯を作る。更に米に麹をつけて発酵調味料(味噌醤油等)を作る。国土の75%は山であり、山に降った水は毛細血管のように国土全体を潤す。ミネラル分を含んだ平野部に種を蒔けば、温暖多湿の我国では野菜が採れる。
また、世界中で一番魚種の多い国である。4海流が日本の周りを流れている。魚種4000種の内、食している魚は300種。市場流通している魚は30種である。資源(魚を獲り)を大切にしながら野菜を育て、それを発酵調味料で煮炊きして飯を食べていれば、どこからも輸入することなく暮らせる国である。元のように戻していかないと、この国の未来は暗いものになってしまう。私の子供の頃、服は継当てて着ていた。日本人が裕福になったのは、ほんのここ30年くらいである。和食を文化遺産に登録をして、自国民が自分たちの文化としての和食の大切さを、もう一度考えなくてはいけない。文化遺産とは遺産であり、絶滅危惧種であるという事である。これをなんとかユネスコの無形文化遺産に登録をした。ユネスコから聞かれるのは保護継承するシステムがあるかどうかである。その為に各大学に食学部を作るなど動いている。それらの文化を牽引していく人及び団体があるか問われているが、その人及び団体がこの和食会議である。目的意識をしっかりと持って各部会で活動して頂けたらと考えている。
・日本は世界に比べて非常に変わった文化を持っている。例えば「いただきます」は日本だけで他の国は「ありがとう」である。一回の糧をいただいてありがとう。「ありがとう」と言った時点で捕食者と捕食されるものに分かれている。日本人はあなたの落とした命を大切に自分の命としていただきます。これは大きくても小さくても命は一つという、仏教哲学からきている。
・「箸」について。中国で一番の箸を持って来て、と言えば金か象牙であり、韓国では銀の箸であろう。日本で一番の箸と言えば亭主が自ら削った両細の箸(利休箸)である。その人の為だけに削った箸が一番貴重だと思う民族である。利休箸は両方が細くなっているが、何のために両方が細くなっているのか。片方は自分の為、もう片方はご先祖の為(ここに自分が存在する為に過去に何万人何億人のご先祖がいるが、そのご先祖は自分が今ここに存在する為のみに過去に存在したと考える)ご先祖と一緒に自分の命、次の命に繋げる為に自分の命を箸先で養うのである。日本人独特の考え方である。自分たちの文化をどれだけ大切に繋いできたかという表れでもある。
・戦後、経済成長が終わった頃から、我々はお金でモノを計るようになったしまった。それが現代のようなややこしい世の中になったのかもしれない。大いなる反省を込めて和食を世界の食として広げていく。自分たちの生活・考え方をもう一度見直して戒めることが、文化遺産の大きな意義ではないかと思っている。
以上。
2.テーマ:「和食の定義はなぜ必要か」
普及啓発部会長 伏木 亨
・誰が定義を必要としていて、それは何故なのか。
・和食とは何か、という事を知りたい心とは何なのかを考えると、伝統を「守りたい」「伝えたい」それだけではなく海外展開も狙いたい。(これは和食のブランド化、言わば経済戦略である。)
・精神的な支えとしての和食があると思う。(料理の)皿の中の葉一枚で季節を強く感じさせる。作る側だけでなく食べる側が感じてくれないと成立しない。食事の季節感とは作る人と食べる人の両方で支えてきた。自然に対する考え方があり、天候が荒れる土地で暮らしてきた。(台風、日照りなど)この気候を制御するのは難しく神頼みである。日本人は自然と神を敬っている。天気が農作物に大きく関わっているという事で自然と一体化している。こういう精神的なところを大切にしたいという気持ちがある。また、食事は作る側と食べる側が信頼関係を持っている。より健康に健全な食事を提供したいという作り手の気持ちと、より安全なものを食べたい、たまには品のあるものを食べたい等、食べる側の気持ち。
・こういういくつかのものが定義をほしがっているのかも知れない。和食は古いものではなく洋食が出来たから和食を作らなければならないとなり、和食がクローズアップされてきた。遡れば「我々の食」である。定義する必要ないのではという話も出てくる。
・歴史的な定義は存在する。鎌倉時代に始まり室町時代に料亭の日本食の型が出来て、そして武家のお膳の料理が懐石料理のヒントを与えた、という「日本料理」には歴史がある。和食は恐らく各地域、郷土で美味しいと思ったものを大事にしてきた歴史である。日本食の料亭の影響も強く受けていると言いながらも、この二つの系譜は違う。こういうもの定義するのは大変である。
・味わいの定義は、旨みが中心にあってごはんを美味しく食べる。これは外せないところ。現状を重視して寿司、カレー、ラーメン、トンカツ、牛丼等。海外は餃子、ラーメン、変形寿司もあり、これが日本に戻って来て和食になるかも知れない。和食の定義は難しい。どれも排除したくない。
・広義の定義はごはん、汁、漬物で、あとは何でも可。これまで食べてきたもので洋食以外は全て和食で構わない。そう言えばみんながハッピーなのではないか。
・最も大事なのは、日本国中どこに行っても同じモノというのは避けたい。狭い国土ではあるが、どんな地域にも特有のものがあり、それぞれ全体として日本食を作っている。これが一番大事だと思う。日本食を定義してみんなが似たような感じになってしまうのは楽しくない。実は定義は大事でないと思っている。日本食はこれからも発展して行くでしょうし、100年後には違う食材が入っている。皆さんに考えてほしいのは定義するよりも、日本食を楽しんで、これが日本食と広く捉え、大事なところを感じてほしいという事です。
以上。
【懇親会】
18:00 開会・乾杯
21:00 閉会・解散