「和食」のつぼ


−箸の色々①−

     こんにちは。近茶流の柳原尚之です。

     箸には、普段ご飯を食べる時に使う箸、料理を取り分ける箸、料理をしているときに使う箸、その他、神事に使う箸など、用途や素材などを考えると数えきれない種類の箸があります。今回は各自が使う手元箸について説明していきましょう。

    手元箸
     普段、食事をするときに使う箸。銘々それぞれ自分の手元に置いておく箸なので手元箸と呼ばれます。割り箸の箸袋には「おてもと」と書かれていることがありますが、それはこの手元箸から来ています。
     家庭では漆の塗り箸を使うことが多くあります。漆り箸は丈夫で、酸などに強く、味への影響も少ないことから重宝します。また、若狭塗、輪島塗、津軽塗など各地の伝統工芸品として多く生産されています。美しい塗箸を使うことで、使いやすさと共に日本の漆文化を一番身近に感じられる存在でもあります。また最近では、生漆を薄く塗った拭き漆と呼ばれる塗り箸もシンプルな姿で人気が出ています。塗り箸の注意点としては、鍋料理の時などは、箸先が傷みやすいので、割り箸など使うといいでしょう。

    祝箸
     手元箸の中でも特別な箸が祝箸です。お正月の節供料理をいただくときに使います。箸袋は水引などで飾られ、家族銘々の名前を書き入れ、年神様と共に節供料理をいただきます。
    素材に柳や檜を使った両端が細くなっている丸箸を使います。
    両細箸とも呼ばれることがありますが、本来の意味は、中心が膨らんでいることに意味があり、神事に使われる「孕み箸(はらみはし)」に通じ、子孫繁栄の願いが込められています。

     また、柳の箸を用いる理由は、室町時代の故事に由来しています。
    若くして即位した足利義勝七代将軍が正月のお雑煮を食べているときに箸が折れてしまい、その年、落馬して亡くなってしまったことから、折れにくい柳箸を使うようになったとされています。
     また毎年2月から3月に行われる奈良東大寺の修二会(お水取り)の行事においても、2月中、別火と呼ばれる期間、練行衆と呼ばれるお坊様方は自身の行事の中の役職が書かれた箸袋を用いて精進料理をいただきます。厳しい修行の中、自分役割をしっかりと認識する役目があるそうです。

     次回は、取り箸や箸の選び方についてお話しします。

    柳原 尚之

    次回は、4月17日を予定しております。