今回は、食卓の装飾品であるフィギュアとセンターピースのお話です。
食器や箸などのように食すために直接必要なものではありませんが、食事のテーマを象徴し、祝う気持ちを形にしたセンターピースやフィギュアを配すと、素敵な雰囲気を演出できます。特にハレの食卓では、取り入れたい工夫のひとつです。
食卓装飾品は西洋の文化で、日本では床の間や玄関のしつらいがその趣旨に近いものです。西洋では、王や貴族の富と権力を表現するものとして食卓に飾られてきました。
食卓装飾品のうち、センターピースの歴史は、シュルトゥーという大型の置物装飾から始まり、花や果物を華やかに大きく盛りつけることを経て、やがて高価な磁器の鳥獣などの置物へと移り変わりました。これらのものをテーブル上のパブリックスペースの中央に、または左右対称に豪華に飾りました。
フィギュアとは、小さな人形や動物の置物、キャンドルスタンド、スープチューリン、カトラリーレスト、ネームスタンド、ナプキンリング、ソルト&ペッパー等を指します。会話の糸口となるトーキンググッズでもあります。
現在では、どちらもシンプルで小さなものとなりました。
和食卓でのフィギュアとして最も身近なものは、箸置きでしょう。
さらにセンターピースとして、季節の草花や枝ものを少しあしらい、食卓のテーマとなる人生儀礼や季節行事を象徴するものを配すると、心遣いが伝わります。
美しい和のスタイル演出は、アシンメトリーに、余白を大切に、簡潔に飾るのがコツです。難しく考えず、楽しんでみましょう。
例えば、鶴の折り紙を正月に、雛を上巳の節供に、兜を端午の節供に配するだけで素敵なフィギュアとなり、和スタイルの魅力的な食卓が出来上がります。
折り紙は、日本の伝統文化である折形を源流としています。
折形の原型は鎌倉時代に誕生し、室町時代の武士の礼法として確立しました。和紙を正しく折ることで相手を敬い尊ぶ心を表します。和紙は折り直しが叶わないため、気持ちを込め一折りするごとに礼の心が宿り、自然と心も整います。折形の折りと包みを食卓に配すと品格も上がります。
最高格の和紙とは白無地手漉きの檀紙ですが、家庭では食卓のイメージに合わせた色柄の紙を自由な発想で使うのもモダンでおしゃれです。
食卓は食事をおいしく楽しむ場所。心地よく食空間を整えることで、おいしさ、楽しさも増します。
ともに食卓を囲む人々におもてなしの気持ちを伝え、心を通わせ幸せを分かち合うために、小さな食卓装飾品は大きな役割を担ってくれます。
最終回まで読んでくださった皆様ありがとうございました。
長尾 典子
次回は、3月1日です。