和食の盛付けの特徴で、左右非対称(アシンメトリー)というのがあります。左右が対称(シンメトリー)になっていると見た目は安定して落ち着きます。(写真1)
しかしこれでは、和食らしい盛付けではなくなってしまいます。
和食らしい盛付けにするには、左右非対称に盛付けるのですが、ただ単に左右非対称に盛付けては、バランスが崩れてしまいます。(写真2)
左右非対称に盛付けながら、バランスを取っていくことが大切です。
バランスを取るというのは、均衡を保つことです。大きさ、形、量、色合いを組み合わせて均衡を保っていきます。(写真3)
また、盛付けの時に注意しなくてはならないことは、見た目を安定させることです。同じ方向ばかりに並べてしまうと、流れていってしまいます。(写真4)
こういった場合は、何かを違う方向において、流れを止めることが大切です。それにより、安定します。(写真5)
器を変えることでも料理の印象はずいぶん変わります。
例えば、精進料理を朱塗りの器ではなく、別の器に盛付けるとずいぶん印象が変わります。(写真6)
新しい形の精進料理ということで、料理屋で出すのはいいかもしれませんが、これをお寺で出したらすごく違和感があります。どこで、どのようなときに料理を出すのかによっても、盛付けも器も変わってくるのです。
盛付けをするときには、いつ、誰が、どこで、どのような状態で食べるのかを考えておかなくてはなりません。
また、見た目だけでなく、実際に食べることを考えると、味つけは重要なのですが、味つけだけでなく、大きさ、固さ、食べやすさ、取りやすさというのも大事な要素になってきます。盛付けの大半は見た目です。
でも、見た目だけでなく、盛付ける前に考えておかなくてはならないことがたくさんあります。いつ、誰が、どこで、どのような状態で料理を食べるのかを考えた上で、バランスよく盛付けることが大切なのです。
盛付けのバランス感覚を身につけるには、どうしたらいいのかとよく聞かれます。私は、美術館や博物館でいいと言われている作品(絵でも、書でも、器でも)を見続けることが一番近道ですよと応えています。
園部 晋吾
次回は、1月5日です。