「和食」のつぼ

礼儀作法
−手土産は?−

     会食には親しいひととの気軽な食事から、冠婚葬祭、親戚での集まりなど様々な集まりがあります。改まったご挨拶の場や重要な商談の場(上司のお供だとしても)などの時にはお座敷にあがることもあるでしょう。もちろん自宅に招かれたり、逆に招いたり、といったこともありますね。
     最終回はこういった場面につきものの手土産の渡し方、受け取り方についてご紹介して締めくくりたいと思います。
     
     お菓子などを渡す場合は、紙袋から出すのが正解です。紙袋はほこりなどがついている可能性があるので、そっと畳んで持ち帰ります。親しい人の場合は、「処分していただいてもよろしいでしょうか」とひとこと添えて紙袋の処分をお願いしても良いと思います。紙袋のまま渡すのが丁寧だと思っているひとがいるように思いますが、実はそうではありません。
     
     次に手土産を風呂敷でいただいた場合。紙袋と違って風呂敷はお返ししなければなりません。その際、茶道の世界では懐紙を包んでお返ししますが、そうでなければちょっとしたお菓子などを包んでお返しするのがよいでしょう。これができたら上級者です。近ごろは手土産も紙袋でいただく場合が多いので、そんなお返しの品など用意していないことのほうが多いかもしれません。とはいえ何も包まず空で風呂敷だけをお返しするのは本来のマナーではありません。そのため、そういった場合には「空でお返ししてしまいます」「いただくばかりで申し訳ありません」などとひとこと添えるとよいですね。

     和食をいただくときのマナーは、相手を思いやり、気持ちよくお付き合いできるよう身につけるもの。食事の際も、相手は正面にいらっしゃることが多いので、前回お伝えしたような美しい所作は相手にとって気持ちのよいものなのです。より良いコミュニケーションのために最低限覚えるべきもの、とでもいうべきでしょうか。そうなると普段は必要なくても、万が一の時にために覚えておいたほうがよいということになりますね。知らないと恥ずかしいというより、知っていると生活がしやすいと思うのです。ぜひこの機会に知っていただきたいです。

    後藤 加寿子