「和食」のつぼ

食卓の彩り
−魅力的な伝統柄−

     皆さんのテーブルコーディネートのイメージはどんなものでしょうか。ワイングラス、カトラリー、ディナープレート等洋食器が並ぶ華やかな非日常の食卓でしょうか。一方、私たちの日常の食卓には箸と茶わんが並びます。
     私の食空間コーディネーターとしての近年の仕事は、洋の演出よりむしろ日常の食卓と年中行事をテーマにしたハレの食卓を提案する、和食を基本にした演出の仕事に増えています。おうち時間が増え、暮らしを丁寧に自分らしく創ることに興味と関心が向いてきている方が多いのでしょうか。
     
     和のコーディネートに注目が集まるのと同時に、和食器の組み合わせが難しいという声をよく耳にします。確かに和食器には様々な色、柄、形、素材の器があります。
     洋食器のように、基本的に同じ色柄の丸皿を組み合わせ、サイズにより用途が決められている、明瞭で合理的なルールはありません。
    だからこそ、多種多様な器をバランスよく美しく組み合わせることは、趣のある魅力的な和の演出ポイントです。それには、センスを磨き経験を積み重ねることが大切ですが、伝統的な決まり事を少し知っておくことも近道のひとつです。
     フォーマルの真、インフォーマルの行、カジュアルの草という格の違いがあり、使う季節や時が決まっているものもあります。
     基本の意味と決まりごとを知っておけば、どこまで崩してよいか、器の取り合わせの助けになります。

     伝統柄は吉祥を表すものが多く、それぞれの由来を知ると楽しいものです。共に食す人がお互いの健康や幸せを願う仕掛けでもあり、四季折々の植物を描いた器、めでたさを形や柄に映した器を食卓に配するだけで、気持ちも上がります。
     お正月には、扇、ひし形、六角、八つ橋などの形の器、結び、鶴、亀、松竹梅、日の出、富士等の柄の描かれたものが寿ぎを演出してくれます。
     春は梅に始まり、桃から桜、藤、かきつばた、菖蒲へ、夏には瓜、柳、紫陽花、鉄線など。秋には桔梗、紅葉と流水、菊、ススキ、といった柄で季節を楽しむことができます。冬には雪輪がぴったりですが、涼しさを呼ぶと、夏に使う粋もあります。
     一方で、通年使える木賊、青海波、網目、唐草、市松、麻の葉、七宝などは、柄もシンプルで合わせやすいでしょう。特に染付は出番が多く便利です。また手書きの柄は趣があり素敵です。
     ハレの日の華やかな演出には、五彩や赤絵、錦手、金襴手を使うといいですね。

     四季折々に、旬の食材を旬の器に盛り付ければ、食卓に彩りが生まれ、目に悦びを、心に和みと癒しを運び、おいしさを倍増させてくれます。
     食空間演出の効果はじつは大きいものなのです。

    長尾 典子

    福寿と唐草の汁椀
    鯛、鶴、波 めでたさ尽くしの小皿
    鶴の小皿は祝いの食卓にぴったり
    染付の松柄はコーディネートしやすい一皿
    五枚組の松に日の出柄の五寸皿

    次回は、2月16日です。