「和食」のつぼ Vol.2

発酵
−日本の風土が生んだ和食の芸術「発酵」その1−

     日本は、発酵の国であり、古くから色々な微生物を発酵食品が多く作られてきました。そこには日本の風土が、重要な役割を果たしています。四季があり、海に囲まれた温暖湿潤気候をもつことから、菌の生育環境が整っており自然と発酵文化が醸し出されてきました。その上、江戸時代に入ると醸造技術や流通の発展により醤油、みりん、日本酒、酢、鰹節、なれずし、漬物などの幅広い発酵食品や調味料が作られ、使われるようになり、和食文化の重要なピースとなっています。
     一般的に発酵とは、酵母や細菌などの微生物の働きによって、糖などの有機化合物を分解してアルコールや有機酸、炭酸ガスなどを生じる過程をいいます。さらに、微生物の作る酵素の力や、年月をかけた熟成によって、食品が本来もっていなかったおいしさや香り、栄養価、保存性を高めるなどの付加価値を与えたものが発酵食品となります。写真①
     海外の料理の多くは、油と香辛料で味を組み立てますが、一方、和食は水と醸造調味料で味を組み立てます。醤油ではうま味と塩味、酸味。みりんではうま味と甘味。日本酒ではうま味。酢は、酸味とうま味。などの五味を与えてくれます。その中で、どの醸造調味料にも共通するのはうま味です。発酵することで作り出される奥深いうま味こそが、日本のだし文化とも繋がり、現代の和食の味を作っています。
     最近では世界への和食の広がりに伴い、海外の現地で日本酒や醤油、味噌、鰹節などの発酵食品が作られるようになりました。また、海外の料理人たちも麹による発酵に興味をもち、自分たちの料理にも取り入れるようになりました。その中でも、世界No1レストランと言われているNOMAのレネ・レゼピさんは技術開発担当のシェフでもあるトーマス・フレベルさんと共に,日本の麹文化や発酵技術に惚れ込み、鰹節の技術を使って鹿肉で鹿節をつくったり、麹を使って日本人でも見たこともない新しい料理を開発するなど、世界でも日本の発酵文化は注目されています。写真②

    写真① 鰹節
    写真② トーマスフレベルのレストランにて

     二十一世紀は発酵の時代といわれており、今まで先人たちが培ってきたすばらしい発酵文化に加え、私たちが新しい発展をむかえる時期に来ていると思います。写真③
     次回は、発酵食品の特徴をさらに掘り下げていきます。

    写真③ 醤油みりん、酒を使った焼き物

    近茶流宗家 柳原 尚之

    次回は、1月16日を予定しております。