「和食」のつぼ Vol.2

水 
−水と自然②−

     お正月の朝、井戸から若水(わかみず)を汲む風習が、日本にはあります。若水には病気を追い払い、再生の力があると考えられているからです。若水だけでなく水はお祭りや行事のテーマにもなっています。水を大切に扱うそうした心は、神羅万象、自然からの恵みを大切にする日本人特有の心につながっています。
     水売りのいた江戸では「人間の背負い水」という言葉が普段から使われていたそうです。「人間は一生に使う水を背負って生まれてきている。だから大事に水を使って長生きをしなければならない」。まさに「借りた水を返す」ということです。現在の私たちも自然界を大循環する水が人間界に立ち寄ったとき、その水をどのような形で循環経路に戻すか、という課題を担っていると考えます。
     日本の上下水道は、蛇口をひねればふんだんに良質な水を使うことのできる世界でも数少ない国のひとつです。同時に上下水道が整備されたことで、かつての台所では見えていた「水のゆくえ」が見えなくなってきています。「水のゆくえ」に目を向けることは、コミュニティーを考え、環境を意識することでもあります。私たちメイスイは、自然界に与える負荷をできる限り少なくして、必要な分だけ、使う直前に、浄水器で少しずつ磨く。そして浄水器の使用済みの活性炭を土壌改良に使って、小さな里山を再生する活動へとつなげています。
     多雨で良質な軟水に恵まれた日本はまさに「水の国」。日本独自の食文化の発展は、この良質な軟水によって支えられてきました。例えば、軟水は抹茶を点てるのに最適で、茶の湯や茶道の原型といわれる「わび茶」が生まれました。「わび茶」のスタイルから発展した茶の湯の料理は、質的にも量的にも食べきることができ、人の健康にも環境にも優しい料理です。私たち日本人が水を通して培った文化は、地元の食べ物をもっと食べ、健康にも経済にも環境にも良い暮らしを取り戻そうという考え方とも重なります。

    株式会社メイスイ 代表取締役社長 永井 秀樹

    めいすいの里山から見た琵琶湖と棚田
    めいすいの里山に植林する