新鮮な旬のものは本当に美味しいし、その季節が来ると五感がくすぐられ映像が浮かび食べたい願望が湧き出てきます。
 生き生きとした採れたてのお魚が美味しいのは言うまでもないのですが、朝一番に採れた野菜はなぜおいしいのでしょうか?それは前日に貯まった養分が蓄積され、朝が一番その養分が保たれた状態。夕方になるとその養分を消費してしまう。野菜は収穫しても呼吸しているのです。だから朝一番の採れたての野菜は美味しいのです。
 京都に限ると、長く都の時代が続いていたので全国から様々な美味しいものが集まってきました。野菜に関しても献上物として運ばれてきました。それで京都の土地や気候が野菜作りに適していたため独自に発展した伝統野菜が生まれたのです。京野菜は味わい深いと評価されます。また、寺院が多く精進料理も発達しました。
 比叡山をはじめ山々からの美味しい水、腐植質の含まれた豊かな土地、強い季節風の吹かない穏やかな風。寒暖の差の気候が作物を美味しくする。季節に合わせた野菜と料理法を自然豊かな土地で味わう醍醐味は人の体をリフレッシュする効果もありそうです。京都はそんな野菜を守り育むことを得意とする文化を持っている地域でもあります。
 和食が文化遺産になりました。なくしてはいけないものは絶対に残さなくてはなりません。北海道から沖縄まで普段食されている料理はすべて和食です。地元の風土に適した旬の食材をいつまでも絶やすことなく大切にしていかなければなりません。現代農業は工業製品に近くなり、大規模農家の効率を重視する傾向が増えています。それで値段も安くなり農家の収入も上がります。しかしデメリットとして商品が大量生産され多様性を失う、本当の旬の野菜は少量生産が基本です。農家の方が丹精込めて育てることで味わい深い野菜ができるというものです。本物の旬の季節のものを味わいたいものです。
 また温暖化が進む中、魚類の生態系にも変化が出ていますが何とかもう一度自然を守り、大切にし、季節に合わせた味わいを食べる習慣をつけることが本当に幸せであると思います。

七代目 近又当主 鵜飼 治二

次回は、11月1日です。