つなぐ「“わ”食」よもやま話

その4
−和食の未来−  

     今や世界をリードするおいしさとなった和食は、これからも美味しい食の代表としてその地位を維持できると思う。その最大の理由は、低カロリーなのにおいしいという信じられない性質にある。健康と美味しさの二律背反を伝統的な和食はいとも容易に解決してきた。
     油と砂糖とうま味。「世界中の料理は、この3者のいくつかあるいはすべてを駆使して美味しさを実現してきた。豊かになった欧米の先進工業諸国が油と砂糖に固執したのに対し、和食は意識的にうま味と塩味に美味しさの源泉を求めた。
     油も砂糖もうま味も、脳を刺激する快感は同じである。鰹節や昆布、野菜などの抽出液を最上の美味しさと感じる和食の文化は、人間の美味しさに対する欲求が高まった現代でも、なお健康的な食文化を維持する力を有している。幸運としか言いようがない。
     四方が海で囲まれ、仏教の教えが浸透して獣肉に執着して来なかった偶然があったにしろ、幸運な食文化に恵まれた日本の和食は、これからも我々の欲求を静かに満たしてくれる頼もしい食となり続けるであろう。

    伏木 亨

    次回9月1日は、伏木会長からつなぎます。株式会社奥井海生堂 取締役社長 奥井隆氏のお話です。