「和食」のつぼ Vol.2

発酵
−お酢は今や健康飲料!−

     お酢には爽やかな酸味を付与するだけではなく、さまざまな調理効果があります。例えば、油っこい料理をさっぱりとした味わいに変え、素材のカルシウムを引き出し、色合いを鮮やかにすることができます。更に、食欲を増進させたり、減塩のサポートをするだけでなく、防腐・静菌作用も期待できます。
     最近では、これらの調理効果に加えてお酢の健康効果が注目を集めています。お酢は古くから身体に良いとされ、医学の父・ヒポクラテスは紀元前 400 年ごろ、お酢の抗菌作用や健康効果に着目し、呼吸器病や皮膚病の治療に応用していました。近年の研究によれば、毎日大さじ一杯(約 15ml)のお酢を摂ることで様々な健康効果があることが科学的に裏付けられています。しかし、お酢の主成分である酢酸の刺激により、お酢を継続的に摂るのは難しいと感じる人もいます。そこで、果汁などで酢酸の刺激をやわらげたお酢のドリンクが人気となり、調味料を上回る勢いで拡大しています。
     お酢のドリンクとしてはシュラブがあります。シュラブはオスマントルコ時代に誕生したノンアルコールドリンクです。フルーツビネガーをベースにボタニカルや果実フレーバーを加えたもので、16 世紀にはイタリアで広まり、1747 年にはロンドンの「ジェントルマンズ・マガジン」に掲載され、米国に渡って1920年代の禁酒時代に一大ブームとなりました。当時、冷蔵庫がなかったために保存がきく飲み物としても使われ、カクテルの割り材としても活躍しました。
     時が経ち、シュラブは現代のアルコール離れの流れに乗って蘇りました。英国で再び注目を浴び、欧州や米国のバーでノンアルコール飲料として人気を博しています。このシュラブのようなアルコールに代わる存在としてお酢カクテルは、オルタナティブアルコールとして、低アルコール化やノンアルコール化が進む現代において、新しいお酢の価値を引き立てる可能性があります。興味深いことに、現在、人気を博しているオルタナティブアルコールは、19 世紀の米国のバーテンダー、ジェリー・トーマスが早くから注目していました。彼は「カクテルの父」と称され、1862 年には「HOW TO MIX DRINKS」というカクテル本を著し、その中でシュラブの作り方を詳細に紹介しています。アルコールのかわりにお酢を使ったカクテルに挑戦してみてはいかがでしょうか。

    株式会社Mizkan マーケティング本部 赤野 裕文

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