二十四節気のひとつである穀雨は立夏の前、徐々に夏が近づいてくる時期。この時期の雨は「百穀春雨」とも呼ばれるようにあらゆる穀物を潤して育てるめぐみの雨と考えられ、穀雨を目安にし、その前に種まきを終えるよう作業されてきました。
「雨後の筍」という言葉がありますが、筍もその恵みの雨で育ちます。
2月頃までの早い時期の筍は肥料を与え、電熱で温めることによって畑で大切に育てられたもの。その分お値段も高価です。3月頃から自然に顔を出し始め、畑でどんどんと顔を出し気軽に食べられるようになるのはさらにもう少し後。写真はそんな時期に体験できた焼き筍です。炭火の中に顔をのぞかせている筍がおわかりになるでしょうか。
以前、嵐山光三郎さんがご自身の本の中で絶賛されていたのを読み、いつか味わってみたいと思っていた焼き筍。それは根から切り離さずに周りを深く掘り、炭を置いて焼くというものでした。当然その周りの竹は枯れてしまうので、大切に育てている畑ではできません。あまり手を入れず自然のままに近い山をお持ちで、竹が伸びすぎて逆に困ってしまうというかたのところで体験する機会をいただきました。
根の張った土を、周囲に炭を置けるくらいまで掘らないといけないのが一苦労。そのため1本だけを根付きで焼き筍にし、他4~5本は掘り起こしてすぐに、予め起こしておいた焚火に入れて焼きました。その違いといったら!驚くほどおいしいものでした。掘りたてをすぐに焼いたものでさえおいしいものなのに、焼いているあいだにもアクがまわるのでしょうか。アクの感じ方が全く違いました。
さて、贅沢な大人の外遊びから家庭での話に戻ります。
お値段的にも使いやすくなった最盛期の筍は、日常のおかずとして気軽に使います。ご紹介したレシピのように筍ご飯を炊くこともありますが、おだしを取った後の昆布を小さく切り、鰹節がきいただし汁で一緒に煮ることも。捨てられがちな昆布ですが、煮込むと昆布が筍に絡まるくらいとろとろになっておいしいです。ぜひお試しください。
そして穀雨の終わりには八十八夜、新茶の季節が訪れます。
写真は、春先に聖一国師の生家がある静岡市郊外に孫たちを連れて桜を見に行ったときのもの。聖一国師は宋から仏教の経典とともにお茶の種を持ち帰り、静岡で最初に種をまいた静岡茶の祖といわれるひとです。代々お墓とともに茶畑が守られていて、自然に近い状態で育てられている美しい茶畑を桜とともに楽しむことができます。
桜の頃にはこんなに小さな芽が、穀雨の雨がめぐみとなって八十八夜で摘めるように。いよいよ新茶の季節です。
静岡のようなお茶処では、子供たちもこういった美しい景色を目に焼き付け、お茶に親しむことができます。また、お茶を身近に感じられるような食育もなされています。ところが残念なことに全国的にはだんだんとお茶を飲むひとが減っているようです。
私はあまり複雑に考えず、単純に「おいしい」と思ってお茶を飲んでいます。そのおいしさを知っていただけたらうれしいのですが、まずは最近よく言われる健康効果や、ほっとするリラックス効果のためにも飲んでいただけたら。ゴクゴクとのどの渇きを潤すにもおいしいお茶ですが、一区切りしたいときなどにコーヒーを淹れるのと同じ感覚で、一度じっくりと味わってみてください。シャキッとリフレッシュできますし、お茶のおいしさを再確認していただけると思います。
後藤 加寿子
たけのこご飯
材料 2人分×2回
ゆでたけのこ…140g
米…2カップ(400㎖)
油揚げ(12×6cm)…1枚
だし汁…約2カップ
薄口しょうゆ…大さじ2
みりん…大さじ1¹/₂
作り方
①米はよく水洗いしてざるに上げ、1時間おく。
②油揚げは熱湯をかけて油抜きをし、2cm長さの細切りにする。
③たけのこは太い部分を2cm長さの薄切りにする。
④炊飯器に①を入れ、正味量とだし汁で米の1割増の440㎖にして加える。②③を加えてスイッチを入れる。
◎たけのこは含め煮にしたものを使ってもいい。材料の分量は同じ。
次回は、5月2日 八十八夜(はちじゅうはちや)です。