3月21日は、二十四節気の一つ春分です。春分から前後3日を含め1週間を彼岸といい、春分は彼岸の中日をさします。昼と夜の時間が同じになり、この日から次第に日中の時間が長くなることはご存じの通りです。彼岸の期間、先祖の供養のために墓参りをしますが、コロナ禍のために、両親が眠る郷里の墓参になかなか行けないのは残念です。
「暑さ寒さも彼岸まで」というように、この時期から急速に過ごしやすい季節に向かいます。気象庁の今年の桜の開花予想では、熊本、福岡、高知などが早く、3月22日に開花し、東京は24日の見込みで31日には満開となるようです。しかし、このデータは常に更新されますので、早まるかもしれません。青森は4月22日とされていますので、桜前線の北上には、約1か月かかることになり、改めて南北に長い日本列島の地形を実感します。
ソメイヨシノは、江戸時代、江戸の染井村で誕生し、接ぎ木により子孫を広げ、明治以降、土手、公園、学校などに植えられて全国に普及しました。DNA分析などでソメイヨシノの由来がはっきりするのは、10年ほど前のこと。野生のエドヒガンザクラにオオシマザクラとヤマザクラが少し混ざって生まれたとみられています。
彼岸には、ぼたもちやおはぎが知られていますが、神奈川県などには「入りのぼたもち明けだんご、なかの中日小豆飯」という言葉があり、ぼたもちは彼岸の入りに、彼岸明けには、明けだんごを、中日の春分の日は、小豆飯を用意するところがあります。
小豆飯は、もち米とうるちを混ぜて炊く地域、うるち米のみに煮たあずきを入れ、小豆の煮汁は入れない地域もあり、うるち米に小豆と小豆の煮汁を入れて炊く小豆飯もあります。しかし、もち米を蒸した赤飯も現在は、もち米とうるち米をいれて炊くことも多くなり、区分がはっきりしない傾向もみられます。
古代には、赤米を使ったご飯が行事食に使われたことから、小豆を加えて調理した赤飯や小豆飯が行事食として定着してきました。赤は邪気を祓う意味を持っていると考えられたからです。
静岡県などでは「入りだんご、中日ぼたもち、明けだんご」という言葉もあります。このように地域や時代により内容も異なり変化していますが、春分を含めた彼岸に、祈りを込めて食べ物を用意することは続いてほしいと願っています。
江原 絢子
次回は、4月5日 清明(せいめい)です。