くらしの歳時記

1月1日 正月 しょうがつ

     謹賀新年、よいお年をお迎えのことと思います。正月は新しい年の第一歩で年を重ねる始まりでもあります。1950年から誕生日をもって年齢を表すようになり、それ以前は正月を境に年を数えました。正月に歳徳神を迎える時が晦日、朔日と地域によって異なります。迎え方もいろいろあり、2年参りと称して神社を訪れる人、初日の出を拝む人、除夜の鐘をこたつにあたって聞く人などなど。正月ほど日本人が大切にしてきた行事はないのではないでしょうか? 2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」にも「正月を例として」がついています。

     お正月というと思い出すのは火鉢で焼くお餅やするめ、遊びとしては羽根つきと凧揚げ、かるたなどです。かるたは「いろはかるた」や「百人一首」ですが、群馬県には「上毛かるた」があり、現在も普及しています。その頃、覚えたことは忘れないので不思議です。

     年越しそばを食べて、除夜の鐘を聞いて床に就き、元旦の朝は家族全員晴れ着に着替えて、挨拶をし、「おせち」をいただきます。背筋が伸び、晴れやかな気持ちになります。

     そういえば元旦は晴れていることが多いようで、初日の出をカナダで迎えた時、日本人特有の慣習であると聞きました。

     お正月にいただく御馳走は歳徳神や先祖霊を迎える祈りをこめて作られます。特に雑煮は地方色が濃く、お餅の形やだし、調味料、具材などに特徴があります。

     しかし、I町のように「正月家例」といって雑煮を食べる家は少数派で、餅ではなく里芋の料理や麺類が多く、三が日は餅を食べないという禁忌もあるといいます。

     それはともかくとして、食材にもそれぞれ祈りの「いわれ」をつけて、一年のはじめに祝うことはこれからも大切に伝承していってほしいと思っています。

     おせち料理は節(せち)の日に用意する祈りを込めた御馳走ですから、正月だけではありませんが現在は一般にはお正月に限られています。お屠蘇からはじまり三つ肴、焼き物・煮物・なますなどをお重に詰めて、お雑煮が用意されることが主流でしょうか?

     我が家では最初の正月に三つ肴の「田作り・数の子・黒豆」を出したところ、「ちょろぎがない」といわれ、耳を疑いました。ちょろぎって何、食べ物?飾り物?「赤いちょろぎ」ますますわかりませんでした。そしてお雑煮では「なるとと高野豆腐」が入っていないといわれ、三日とろろでは「醤油か味噌」で喧々諤々、あれから数十年がたちどうなったかはご想像にお任せします。(ちょろぎは最近正月用にスーパーで見かけます)

     コロナ禍で自治会の餅つき大会は、残念ながら昨年・今年と中止になりました。毎年暮れに、慣れない手つきで若いお父さんたちが杵を振り上げます。搗きたてのお餅は賑わいとともに格別なおいしさです。年配の方たちは故郷の子供のころの話を嬉しそうに語っています。お正月を先取りする行事ですが共生する大切な行いです。来年はできますようにと祈ることしかできません。令和生まれの人たちはどんな思い出を紡いでいくのでしょうか?
    一般の人でも宇宙に行ける時代ですから想像もつきませんが楽しみでもあります。
     

    大久保 洋子

    次回は、1月5日 小寒(しょうかん)です。