くらしの歳時記

11月7日 立冬 りっとう

     立冬は二十四節気の一つで冬の始まりを表しており、今年は11月7日です。しのぎやすい気候の秋から冷たい空気が冬を運んできます。温暖化の影響でしょうか、10月17日に北海道では平地でも雪が降り、全国的に急に気温が下がり、各地で冬支度にあわてました。若いころイギリスへ行き、一日の気温の変化が大きいのに驚きましたが、最近の日本でも同じようになるのではと感じます。

     立冬、立春、立夏、立秋と季節が変わる前日が節分です。4回ある節分も、立春の前日の節分が厄払い行事として継承されています。

     いよいよ気温が下がり、山に積もった雪を通して冷たい風が平地に吹き込んできます。私の子供のころは自転車で追い風ですと自動になり(こがなくてすむ)、向かい風ともなると降りて押さなければ進めない風の強さで 友達の手は「しもやけ」から「あかぎれ」になりとても痛そうでした。私は幸い「ひび」にしかなりませんが、ないものねだりでなぜしもやけにならないのと思ったものです。童謡の「たきび」に≪しもやけおててがもうかゆい≫とありますが最近の子供さんにはあまり見られない現象かと思います。また、≪おちばたき≫が出てきますが近くのお寺の庭には落葉樹の落ち葉がたくさん、それをサクサクと踏み歩く感触を楽しんだものです。時々住職さんが、掃き集めて「たきび」をしていました。

     たきびといえば焼き芋がつきもので、時間をかけて焼き上げたサツマイモは甘くてねっとりして最高のおやつでした(じっくり75度前後の温度帯で最低20分以上焼くとサツマイモの糖度が上がって甘くなるということは後年知ったことです)。

     現在は屋外で火を扱うには届けが必要ですから“たきび”も簡単にはできないことになり、歌の意味もわからなくなっている時代かもしれません。

     子供のころのさつまいもは細くて水っぽいさつまいもでした。甘くてほくほくした栗のような焼き芋の最初の出会いは、上京して石焼き芋屋(リヤカー)の新聞紙で包んだ熱々の石焼き芋の立ち食いです。その後、リヤカーはライトバンになり路上での販売はいつしか見かけられなくなります。最近はスーパーの焼き芋機で季節を問わず売られていますから、何とも言えない複雑な気持ちです。

     そしてサツマイモといえば「きりぼし」があります。「きりぼし」といえばサツマイモでしたが、今は大根の切り干しのことが多いようです。今は昔、干し柿やこんにゃくの輪切りが農家の軒先をのれんのように飾っていた風景はからっかぜとともに思い出す光景です。そして、小学生の友達のあかぎれと男子のこんにゃく刺しを手伝った真っ黒な手は忘れられません。これから寒い冬が始まります。

    大久保 洋子

    次回は、11月22日 小雪(しょうせつ)です。