くらしの歳時記

8月23日 処暑 しょしょ

     処暑は、厳しかった夏の暑さがようやく峠を越し、朝夕にやや涼しさを感じる頃で、二十四節気の一つ。今年は8月23日ですが、台風の到来の時期でもあります。少し前、複数の台風が近づき、秋雨前線の停滞により記録的大雨、低温が続き、各地に被害をもたらしましたが、皆様に障りのないことをお祈りします。
     毎年、夏から秋への変化を感じるのは、蝉の鳴き声の変化です。耳をふさぐほどに鳴いていたあぶらぜみの声が少なくなり、夕暮れに「かなかな」と木々がさざめくようなひぐらしの鳴き声が聞こえ、やがてつくつく法師が語りかけるように鳴くと、夏が終わったなと感じます。

      夕映えの城址しきりに秋の蝉   楠子

     この句は、遺稿集に収めた母の句です。私の郷里、島根県浜田市には、浜田藩の城がありました。江戸初期に築城され、城のすぐ近くには北前船の寄港地があって栄えましたが、幕末には長州軍の侵攻により領内は戦場となりました。浜田藩最後の藩主松平武聰は、徳川慶喜の異母弟にあたりました。当時、病臥中でもあり密かに退城し、城には火が放たれました。
     夏の終わり、城址の古い石段を上ると、木々のなかから聞こえてくるひぐらしの鳴き声は、どこかもの悲しく、有名な芭蕉の句「夏草や兵どもが夢のあと」が思い出されます。
     ところで、この時期以降、おいしくなる魚はのどぐろ(あかむつ)です。喉のなかが黒いので、その名があります。以前は東京ではなかなかその名も通じませんでしたが、とくに島根県出身の錦織圭選手が話題にしたことから、今ではすっかり高級魚となりました。
     のどぐろは、地域と時期により、その油脂の含有量は大きく異なるようですが、この時期以降、浜田沖で底引き網により水揚げされるのどぐろは、脂が乗り、とてもおいしくなります。子どもの頃は、いつも煮つけでしたが、白身に脂の乗ったのどぐろは、品があり、どんな魚よりおいしいと今でも大好きです。
     この2年近く、コロナ禍のため郷里に帰れないために一夜干しを取り寄せていますが、新鮮なのどぐろの煮つけの味には及びません。

    江原 絢子

    次回は、8月31日 二百十日(にひゃくとおか)です。

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