冬でも夏野菜の胡瓜やトマトが売られていたりして、本来の野菜の旬というのを忘れがちな日々ですが、最近各地で見かけるようになってきたのが、「伝統野菜」。
普段私たちの食卓を飾っているのは、害虫や病気や気候変動に強く、収穫量が多い品種へと改良された野菜ですが、我が国で古くから栽培されてきた地方独自の野菜のことを「伝統野菜」と言います。はっきりと統一された定義はありませんので、各地独自ルールを定めておられます。大体どの県でも以下のような認定基準があります。
1.本県で主に栽培されていること
2.本県の気候風土により特性がみられること
3.古く(昭和20年以前)から栽培され、地域に定着していること
賀茂茄子、聖護院かぶ、壬生菜といった誰しもすぐに思い浮かぶ京都府の伝統野菜は、(1)明治以前に導入されたもの、(2)京都府内全域が対象、(3)たけのこを含む、(4)キノコ、シダを除く、(5)栽培または保存されているもの及び絶滅した品種を含むと、歴史条件がだいぶさかのぼります。
ほかに有名なところですと、加賀太胡瓜、金時草といった加賀野菜や、大阪の碓井えんどう、吹田くわい、ピーマンのような形をした長野県のぼたんこしょう、数年前再発見された高知の潮江菜など、きりなく挙げられます。各地を巡るたびにその地ならではの伝統野菜に出会う機会がここ数年で増えてきたなと実感しています。
育成に手間暇がかかり、収穫量も少なく、店頭に1年中同じ野菜は並べられないですが、 そこが伝統野菜の魅力の一つとも言えます。また地域活性や食文化伝承といった方向で、伝統野菜を盛り上げるところも出てきています。代表例が、山形県鶴岡市です。こちらは60種もの在来作物が確認されており、地元のレストラン「アルケッチャーノ」の奥田シェフは、山菜や伝統野菜を巧みにイタリアンに落とし込んで、現代人の生活に即した素晴らしい料理に仕立てています。
その時期しか食べられない希少性、ユニークな姿形、歴史など、注目するポイントは人それぞれですが、デパートやスーパーの野菜売り場で見かけたら、ぜひ買ってみて、いろいろな調理法で試してみてください。郷土料理にチャレンジも楽しいですね。
次回は、東京という都市部での伝統野菜の育成を手掛ける農家さんや伝統野菜普及の取り組みなどを取材した内容を中心に書かせていただきます。
入江 亮子
次回は、11月16日です。