つなぐ「“わ”食」よもやま話

−どうして海苔はおいしいのでしょう−

    山本海苔店の山本貴大です。
    「どうして海苔はこんなにおいしいんでしょう?」誰かが私にこの質問をしたわけではございませんが、そんな疑問にお答えしたいと思います。

    味を構成するのは「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」の5つです。もちろん全てのバランスは大事ですが、何と言ってもおいしさを左右するのがうま味です。甘すぎる、しょっぱすぎる、酸っぱすぎる、苦すぎる。全て良くない表現になりますが「うますぎる」は悪いことではありません。

    うま味の中でも代表的なものを三大うま味成分と呼ばれています。昆布のうま味成分である「グルタミン酸」、鰹節のうま味成分である「イノシン酸」、そして干し椎茸のうま味成分である「グアニル酸」です。

    そしてうま味成分の面白いところは「相乗効果」が生まれることです。「うま味の相乗効果はグルタミン酸1+イノシン酸1=7」になるという話は中学校の家庭科で習ったかと思います。ちなみにこれにグアニル酸1を足すと30になるそうです。

    昆布と鰹節で「あわせ出汁」ですが、別にうま味の相乗効果は日本の専売特許というわけではございません。洋食のブイヨンは牛肉・鶏肉などのイノシン酸と野菜のグルタミン酸の相乗効果を使っていますし、中華もあらゆる料理の最後にウェイパーという豚骨などから取ったイノシン酸と野菜から取ったグルタミン酸をベースにしたうま味調味料を振りかけることで味が決まります。

    昆布にはグルタミン酸が豊富に含まれており、鰹節にはイノシン酸が豊富に含まれており、干し椎茸にはグアニル酸が豊富に含まれています。しかし相乗効果を発揮するためには合わせて使う必要があります。

    しかし、海苔は天然食材で唯一グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸を含むのです。どうりで海苔は30倍おいしいわけです。

    しかし、いくら30倍おいしいとはいえ、うま味成分だけだと物足りません。確かに海苔も海苔だけで食べてもあまり味がしないと感じるかもしれません。

    しかし、うま味調味料は何かにかけて食べるが如く、海苔も何かと一緒に食べてみるとどうでしょう。おむすびや手巻きなどほとんどの場合海苔が最初に舌に触れますので、海苔が舌に触れた途端に海苔の30倍うま味成分が解け始め、口の中が「おいしいもの受け入れ態勢」に入ります。そこにご飯や蕎麦が口の中に入ってきて、海苔のお陰でご飯、蕎麦の味が引き立つのです。ついついご飯や蕎麦といった和食で書いてしまいましたが、海苔は天然のうま味調味料ですのでパスタでもチーズでも野菜でもかけたり巻いたりしてみたらとてもおいしく感じると思います。

    次回はそんなおいしい海苔の作り方の話をさせていただきます。

    株式会社山本海苔店 代表取締役社長 山本 貴大