礼文島昆布探検隊に参加
出汁への興味をさらに掻き立てることになったのは、味の素社が支援してくれた昆布探検隊ツアーであった。京料理で好んで使われる利尻昆布の別格浜にランクされる礼文島香深浜の昆布刈り取りの場での天日干しのお手伝いツアーである。
今回は、伏見の料亭清和荘のご主人竹中徹男さんを隊長として、当時うま味インフォメーションセンターの二の宮くみ子さんをはじめとする味の素の方々、龍谷大から山崎英恵先生と伏木が参加した。
稚内空港からフェリーにのって、利尻島の向かいの礼文島に上陸した。北の植物が、島中に茂る、神秘的な国定公園内にある香深か浜である。現地でお世話になる役場や商工会議所の方と合流して、昆布農家の方にひきあわせてくれた。
最初の仕事は、昆布猟の人たちが早朝に小舟で浜に上げた巨大な昆布を干場に並べることであった。5メートルを超すぬるぬるのこんぶがどうしてもつかめない。両腕と腹で羽交締めにしてを軽トラに積むのに悪戦苦闘した。神社の境内を思わせるような昆布干場には、小石がしきつめられ、草一本も生えていない。ここに昆布を並べて昼過ぎまで干して天日干は終了。倉庫に保管され、せりの日をを待つ。この体験以来、昆布の種類や産地に興味が一段と強くなった。このグループはさらに鰹節の産地である鹿児島県も探検した。
昆布と鰹節をふんだんに使った出汁は震えるほどおいしい。その度に今でも浜の昆布干しや鰹節をカビ付けする室を思い出す。
小学生にだしを体験してもらう
京都の料理人さんたちのなかで早くから話題に登っていたのは和食文化の維持であった。最近の家庭での食は大きく変化し、出汁を使う頻度も少ない。子供たちが大人になった頃には、私たちの料理の味わいも理解されなくなるのではないか。私はお店を子供に継げなくなるのでは?
小学生をなんとかしなければ、という方向に話は進んでいったがどうすればいいのかはまとまらない。食育と言う言葉が出始めた時代であったので、小学生に栄養の知識を教えに行きたいという案などもあった。
意見はまとまらず、散会の時刻になった。場所を変えて続きを、ということで、銀閣寺のなかひがしさんの店にタクシー分乗して向かった。店に再集合した時には、不思議に大体の意見がまとまり始めていた。
小学生に料亭の一番だしを飲んでもらおう。
偶然にも、小学校はゆとり教育の頃で、先生方は自由な教育のアイディアに困っていた時期である。会議に参加した教育委員の方が京都市の小学校校長会で料理人のアイディアを披露してくれた。京都市182の小学校のうち多くが興味を持ってくれた。料理人が手分けして小学校で一番だしを提供する。今日の外に向かって出向く出汁イベントのはじまりであった。
伏木 亨
次回は、8月1日を予定しております。