今回はおいしい海苔の作り方の話です。
まず海苔は冬に育ち、満潮と干潮の間のゾーン(=潮間帯)で育つ海藻です。1949年に海苔の生態が解明され、それ以降海苔養殖が盛んになりました。海苔は縄文時代から食べられていたのに、養殖の歴史は意外と短いのです。海苔の生態が解明される前は、「昨年この辺に網を出したらたくさん海苔が採れたので、今年もこの辺に網出しておこう」というレベルでした。つまり生産が全く安定せず採れる年もあれば全く採れない年もあり、海苔は別名「運草」と言われていたくらいです。今は網に海苔の胞子を付けてから海で育てていますが、海に出してから海の状況によっては芽が流れてしまったり、他の動物に食べられてしまうこともあります。養殖というとプールで作るイメージをされてしまうかもしれませんが、海苔養殖はまだまだ母なる海とお天道様に頼っているので「運草」なのです。是非「あなた様にも運がありますように」という想いを込めてお土産・ギフト・ご進物にもご活用ください。
そして現在の海苔養殖は大きく分けて種類あります。1つは昔ながらの作り方である「支柱式」です。海底に長い支柱を挿し、そこに海苔の胞子がついた網(=海苔網)を張ります。こうすることで満潮の時は海苔網が海の中に完全に入り、海苔は海の栄養をたくさん吸収します。そして干潮の時は海苔網が海の外に出て海苔は太陽の光をいっぱい浴びます。満潮と干潮は毎日2回繰り返しますので、その繰り返しで海苔がどんどんおいしさを貯えるのです。ちなみに支柱式の最大漁場である有明海は最大6mの干満の差があります。
一方、その後に開発された養殖方法が「浮き流し式」です。海苔網に浮き具を付けて、常に海苔網を海の上をプカプカ浮かばせて海苔を育てるのです。支柱式では浅瀬の海でしか養殖できなかったのが、浮き流し式が開発されたことで沖の方でも養殖が可能になり、海苔の国内生産量は最高で110億枚にもなりました。1枚とは19㎝×21㎝、量販店などでは「板のり」と呼ばれるサイズです。ちなみに現在の国内生産量は50億枚まで落ちてしまっています。
しかし浮き流し式は支柱式と異なり、太陽の光をいっぱいに浴びる工程がないため、どうしても海苔が固くなってしまい、口どけが悪くなってしまうのです。そうなるとおいしい海苔だとしても、なかなかおいしさが溶け出さない為おいしさを脳が感じる速度が落ちてしまうのです。
別に固い海苔が悪いと言っている訳ではありません。芽が伸びた固い海苔は溶けづらいのでラーメンに入れるには固い方が良いのです。またコンビニのおにぎり等も超高速製造をしますので、ある程度しっかりした海苔でないと、製造工程でボロボロになってしまうのです。要するに用途にあったのりを使うべきなのです。
株式会社山本海苔店 代表取締役社長 山本 貴大

