くらしの歳時記

4月5日 清明 せいめい
※2024年は、4月4日です

     二十四節気の一つの清明は春分から15日目で本年は4月5日です。春といえば桜、その開花日が毎年全国的なニュースになるのですからその思い入れの深さがわかろうというものです。そこへ清明というまたすがすがしい日を迎えます。コロナ禍でお花見も自粛されていますが、桜は春の訪れを教えてくれます。南の地域では燕の姿も見られるといわれます。桜は都会でも近くの公園や学校の校庭、マンションの庭などに植えられ、しだれ桜も交えて春を味わうことができます。少し郊外に出ると川の土手や大きな工場の敷地に植えられており楽しめます。故郷には城山(じょうやま)という町の人々に愛された小さな山があり、春にはその山がすっぽり桜色に染まり、家族連れでにぎわいました。何をするでもないのですが 子供連れでもちょっと汗をかくくらいの高さの山で私たちの山でした。当時はバスもありませんので、よく歩いていましたから子供たちも途中でダウンする姿も見かけませんでした。現在でしたらどうでしょうか?
     4月は新学期を迎え、入学式もあり春休みに遊びふけっていた生活が緊張する時期でもあります。そして近くのお寺(永真寺、龍興寺)では8日の花まつりが行われます。お釈迦様に甘茶をかけるというよくわからないながらも楽しく参加したものです。「唯我独尊」の意味も知らず甘茶をかけていました。飲んだ記憶がないのは飲ませてもらえなかったのかもしれません。
     東京での桜の名所は天海和尚が植えたという上野の山、吉宗将軍が植えさせた隅田川堤や飛鳥山でしょうか。墨堤では長命寺の桜餅が江戸から今に続いて有名です。長六さんの桜の葉を塩漬けにするという発案が人気に火をつけた様です。桜餅は麩の焼き系の江戸の桜餅に対して関西は道明寺粉(モチ米の粒)系の桜餅と2種類あることはどなたもご存知かと思います。錦絵では籠に入った桜餅を楽しそうに運ぶ女性の姿や山で桜を見ながらお弁当を広げている姿などのどかな春の一日を描いています。そういえば落語に「長屋の花見」がありました。庶民もこぞって楽しんでいたのです。
     勤務先だった大学には四季を感じさせる木々が植えられ、春はもちろん桜ですが、八重桜もあり、花見の桜の後に咲きだすのを摘んで塩漬けにして大学オリジナルのお饅頭にトッピングし、秋の学園祭に登場します。春から秋という時間を取り入れたような滋味深い味を楽しむことができますが、そういうこともなかなか伝承が難しくなりそうです。
     古代は桜もめでたようですが梅の方が多かったようです。日本の季節は四季の変化があり、身近に多くの花をめでる感性を培ってきたことは宝ではないでしょうか。桜は今やグローバル化しています。ウクライナ・コロナ問題が早く終結し、桜を世界中の人々が安心して楽しめる社会に一日でも早くなりますように祈ります。

    余談:今年3月26日学習院女子大学のキャンパスで苔むした桜など思わぬお花見をすることができました。都心ですが途中の諏訪神社あたりには枝垂れ桜が圧巻でした。それぞれに風情があってウクライナを一瞬忘れそうでした。色の濃い「プリンセス雅(みやび)」を教えていただきました。

    大久保 洋子

    江戸自慢三十六興 向嶋堤ノ花并ニさくら餅 国会デジタル
    プリンセス雅
    撮影 隅田川 船から撮ったものです。
    こちらも同じ日なのですが、空がだいぶ違ってます・・・?

    次回は、4月20日 穀雨(こくう)です。