くらしの歳時記

2月19日 雨水 うすい

     雨水(うすい)は、二十四節気の1つ。立春の15日目、今年は2月19日、期間は3月4日までをさします。冬に降った雪が雨水により溶け、植物が芽を出す頃で、農作業を始める頃ともいわれています。日に日に日が長くなり春はすぐそこです。
     神奈川県の私の住まいの周辺は、畑や農家が点在しています。その農家の一つで週に何度か数種の野菜類を少量ずつ販売しています。旬が終わると、盛んに出ていた野菜は姿を消し、次の季節の野菜が並び、季節が巡っていることを感じます。
     最近、その農家に皮がまだ白っぽい可愛いたけのこがはじめて姿をみせました。旬よりずっと早いのですが、それを求めて茹で、定番のたけのこご飯と若竹汁をつくりました。シャキシャキとした歯ざわりと淡い香りが、寒さに耐えて生まれてきた春の味を感じさせてくれました。若竹汁には、春に旬を迎えるわかめを加えますが、すぐには手に入らず、塩漬けのわかめを使いました。
     わかめの収穫は春にはじまりますが、古代には乾物にして調や庸の税として各地から京の都に運ばれ貢納されました。古代の頃から新わかめを刈りとり、豊漁や平穏を祈る「和布刈(めかり)神事」は、今も各地に残されていますが、島根県の日御碕神社はその一つです。神事は、旧暦の1月5日、今年は2月5日に実施されました。この神事が終わると、わかめの収穫が始まるとのことです。
     私の友人でもあり、海藻の研究者でもある今田節子氏の著書によれば、日本海側は、干満の差が小さく船での採取が必要で、わかめの採取は漁業の一環として組み込まれており、そのことも豊漁祈願などの神事に繋がっているようです。
     私が育った同県西側の石見地方でも3月頃になるとわかめを採取して、それを洗って干し、板わかめに加工しています。若いやわらかなわかめを採取する必要があり、その期間は短い上、天候を勘案しながら採取の日を定める必要があると聞きました。
     板わかめは、戻すより、さっと炙って海苔の代わりにおにぎりに使い、もみわかめにしてご飯にかけると、おいしいわかめご飯になり、そのまま酒の肴にもなります。いまは養殖わかめが多くなっているようですが、春の訪れを聞くと、やわらかな天然の板わかめを思い出します。

    江原 絢子

    次回は、3月3日 上巳(じょうし)の節供です。