くらしの歳時記

5月5日 端午の節供 たんごのせっく

     5月5日の端午の節供は五節供のひとつ。「こどもの日」として祝われていますが、もとは老若男女に対して穢れを祓い、厄を除けて長寿を願う日でした。今では女の子の桃の節供である上巳に対し、男の子が健やかに育つことを願う日となっています。端午の節供には柏餅をいただきますが、柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちないため、新芽をこども、古い葉を親に見立てて「家系が絶えない」、そこから「子孫繁栄」と結びつき、縁起のよい食べ物として広がりました。粽を食べるというひともいらっしゃるかと思いますが、端午は中国の影響を受けているため粽は中国から伝わったもの。柏餅は日本発祥の食べ物です。

     写真は12月の末に見かけた柏の木。すっかり枯れていた葉をそっと引っ張ってみました。本当に枝から離れず、言われている通りだと確認できた1枚です。

     上巳にはお菓子以外にも決まったご馳走がいくつかありますが、端午には柏餅や粽だけで、そういったお料理はありません。兄の初節供をお祝いする茶事の際、母は様々想いをめぐらせた結果、中国料理の糖醋鯉魚(鯉の丸揚げの甘酢あんかけ)をもとに調理をしてもらったそうです。鯉は立身出世の象徴とされ、めでたい魚です。ただそれを懐石の柿伝さんにお願いしたと聞いてとても驚きました。

     さて、この時期は山椒の葉の新芽(木の芽)が出そろい、花が咲き始めるころです。
     淡い木の芽をぱんっとたたいてお椀に入れるとその香りに春の訪れを感じ、次のお楽しみとなるのがこの花山椒。山椒の花の命はわずか10日ほどの短いもので、市場ではきれいに箱詰めされ、とても高価です。そんな花山椒のとびきり贅沢ないただきかたは、もともと母が地元のかたに教わったもの。その地元とは京都北部に位置する芹生の里です。この辺りは茶花がきれいに咲くため、その採集に訪れた際に「かしわのすき焼き」としてふるまってもらったそうです。

     そのすき焼きにはかしわの他に焼き豆腐、コンニャク、ゴボウなども入れ、煮えてきたところに山椒の花と若葉をぱぁーっとたっぷり散らします。すると瞬時にすばらしく香りが立ちのぼります。山椒の木を持っている山のかたたちならではのソウルフードですね。

     私もその近く、京都駅から車で1時間ほどのところに孫を連れて出向くことがあります。今でもオオサンショウウオが生息しているような山里で、男の子は興味津々。伺えないときは花山椒や実山椒を送っていただいて楽しんでいます。

     こちらの実山椒は小粒で柔らかく、どこのものよりもおいしいと思っています。1日の寒暖差が大きく、朝夕には霧が出ますが、そのミストがおいしくしてくれるのでしょう。また青じそなどもそうですが、陽の光があたりすぎると硬くなります。香りを楽しみたい食材には山の木々の間からさす木漏れ日くらいがちょうどよいのだと思います。

     以前、草喰なかひがしさんでいただいて印象的だった山椒の葉の使い方もご紹介いたしましょう。大きくなった山椒の葉を干して乾燥させ、落ち鮎と一緒に炊いていらっしゃいました。西洋のハーブはドライハーブとしてもよく使われますが、和のハーブはフレッシュな状態で使うことがほとんど。さすが美山で育ったかただと妙に納得してしまいました。

     香りの食材としてゆずと双璧をなす山椒。どちらも過程を楽しみながらいただきますが、5月の下旬くらいには実山椒、そして秋になると熟した実がはじけて割山椒へ。これを乾燥させて挽いたものが粉山椒です。

     花山椒はなかなか手に入りづらいものなので、少し早いですが実山椒を使ったちりめん山椒をご紹介いたします。

    後藤 加寿子

    ちりめん山椒
     材料
      ちりめんじゃこ…150g
      実山椒(ゆでたもの)…大さじ3
      みりん…カップ1/4
      酒…カップ1+1/4
      しょうゆ…大さじ1
      うす口しょうゆ…大さじ2
      *商品によって塩分や色が違うので、加減するとよい。

     つくり方
      ①ちりめんじゃこは、水でざっと洗っておく。
      ②なべにみりん、酒を入れて火にかけ、アルコール分をとばす。しょうゆとうす口しょうゆを加え
       ちりめんじゃこを加えてアクを取りながら弱火で15分間くらい煮る。
      ③煮汁が半分くらいになったら実山椒を加え、さらに5分間くらい煮る。
      ④煮汁が少なくなったら、なべの中央をドーナツ状にあけ、真ん中に集まった煮汁をスプーンで
       すくって具にまんべんなく回しかけながら、弱火で5分間くらい、煮汁がなくなるまで煮る。
       途中、水分がなくなったら、水を適宜足しながら煮るとよい。
      ⑤しっとりタイプが好みなら、④のちりめん山椒をバットに広げて水分をとばしてから密閉容器に移
       し、冷蔵庫で保存する。
      ⑥カラカラに乾いたタイプが好みなら、天板にオーブン用の紙を敷いて④を平らに広げ、120~125℃
       に温めたオーブンに入れて7~8分乾燥させ、さらにオーブンのスイッチを切ってそのまま5~
       10分間おき、予熱で乾燥させる。密閉容器に移し、冷蔵庫で保存する。

    柏の葉
    オオサンショウウオ
    山椒の花
    山椒の実
    割り山椒

    次回は、5月5日 立夏(りっか)です。