つなぐ「“わ”食」よもやま話

−和の力で、日本をひらく−

    現役時代、ラグビー日本代表として体づくりやパフォーマンス向上に取り組むなかで、発酵食品の力を実感してきました。特に海外遠征では、恋しくなるのはいつも、納豆や漬物、味噌汁、焼き魚、煮物、そばといった、自然と体に染み込んでいる和食でした。
    引退後、各地を訪れて食の現場に触れる中で気づいたのは、日本各地に根付く食文化が、時代の変化や後継者不足によって継承されにくくなっている現実。そして、物価高や食料自給率の低下といった、日本の食を取り巻くさまざまな課題です。「日本人が、日本のものをもっと大切にしていく必要がある」——そんな思いが、自然と私の中に芽生えていきました。
    アスリートらしく、身体を動かして学びたいという思いから、宮崎では米づくりにも携わっています。田植えや稲刈りを体験することで、食への関心はより一層深まりました。次世代につないでいくために、子どもたちも参加できるイベントとして展開しています。
    「誰が、どんな思いで、どのように食材を育てているのか」。それを感じながらいただくご飯は、何よりの贅沢だと気づきました。
    田植え体験や、以前ご紹介したスポーツの場でのポップアップ的な活動だけでなく、食や日本文化の素晴らしさを伝えるためには、自ら行動し、場をつくることが必要だと感じました。そんな思いから、鎌倉・長谷に小さなカフェ「CAFE STAND BLOSSOM〜KAMAKURA〜」を立ち上げました。
    歴史ある鎌倉の地で、甘酒をはじめとする日本の発酵食品や、旅先で出会った素材、自分にとって縁のある食材を使い、体が整い、心がひらくようなメニューを提供しています。
    メインで提供しているのは、甘酒を使ったドリンクやスイーツ。甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれるほど栄養価の高い発酵飲料で、体に優しいだけでなく、どこかホッとするやさしい甘さがあります。
    私たちは、それを“ただ飲むだけではない、新しい楽しみ方”として提案しています。たとえば、オリジナルのグラノーラには、宮崎で自ら関わったお米を使った米粉、日本のドライフルーツ、糀から作った甘み「糀みつ」、さらには栄養豊富な米ぬかを加えるなど、日本らしい素材をふんだんに取り入れています。すべて植物性の食材を使い、どんな方にも安心して楽しんでいただけるよう工夫しています。
    「CAFE STAND BLOSSOM〜KAMAKURA〜」には、「誰かの心と体、そして一日が花ひらくように」という願いを込めました。食を通じて人がつながり、笑顔が生まれ、日本が少しでも明るくなるように——。これからも、和の力を信じて、日常にそっと寄り添う場所を届けていきたいと思っています。

    廣瀬 俊朗(株式会社HiRAKU 代表取締役)