2004年の10月、恵比寿シャトーレストランタイユバンロブションからジョエルロブションへとリニューアルし、ムッシュロブションからエグゼクティブシェフをしてほしいとラブコールを受け、悩みに悩んだあげく「では、スタートダッシュをお手伝いさせて頂きます、3年間我武者羅にサポートさせて頂きます」とこの任務がスタートいたしました。
フランス料理界の生ける伝説、皇帝、神様、など様々な呼ばれ方がありますが、1番のタイトルは自店レストランジャマンを開業から3年でミシュラン三つ星に駆け上がった事ではないでしょうか、このような方ですので、とにかく仕事、食材、クオリティ、全てに完璧を求められ、その仕事に対する「鬼」の様な厳しさは第1期タイユバンロブション時代の10年間に骨の髄まで叩き込まれ、ムッシュと働く難しさ、辛さ、精神的と肉体的追い込まれ方、全てを自己分析し、3年だったら耐えられるとの答えでのお返事でした。
ムッシュロブションとの味のキャッチボール、日本の素材のご紹介、調味料の説明、厳しい試食の日々、気がつくと3年間はあっという間に過ぎ、3年目の秋、ミシュラン東京がフランスより初上陸、初年度三つ星必須のプレッシャーの中、三つ星となったのですが、次は毎年毎年のディフェンスとなり、結局第二期の方が長く働く事になり、11年に…
私にとってかけがえのない時間となり、間違いなく良い年輪を増やす事が出来た11年でした。
このミッションの中、2009年、2013年に「ロブション&奥井海生堂&黒龍酒造」のコラボレーションディナーというもの凄いディナーの料理を担当する仕事を頂き、私としても各社のブランドイメージを崩さず、進化を感じて頂く料理を作りディナーを成功させなければならず、昆布の良さ、日本酒の良さ、フランス料理の素晴らしさ、このバランスを保ち、フランス料理と融合させる為には…と試作を始めましたが、実は全ての皿の味が一回で決まったのです!昆布、日本酒、フランス料理、全ての力が、トップクラスの位置、ポテンシャルだったのだと理解出来ました。特に奥井海生堂蔵囲い2年利尻昆布との出会いは衝撃的で、全世界、全人類、国境なき「ウマミ」という味の天体を発見した記念すべき出会い、遭遇でした。
次回はこの奥井海生堂蔵囲い昆布の力を借りたNabeno-Ismで生まれて来た私のスペシャリテの数々のお話をさせて頂きます。
レストラン Nabeno-Ism エグゼクティブシェフ CEO 渡辺 雄一郎