正月とおせち料理

一年の始まりを祝う正月は「歳神さま」を各家庭で迎える大切な年中行事です。一年の幸せを願い、家族が集まって食事を共にし、その際に供されるのがおせち料理です。おせちとは本来、季節の変わり目の節句(節供)に神様にお供えした料理でしたが、正月が一番重要な節句であることから、おせち料理といえば正月料理を指すようになりました。おせち料理は地域や家庭により様々です。五穀豊穣、子孫繁栄、家族の安全と健康等の祈りを込めて山海の幸が盛り込まれ、めでたいことを重ねるという願いを込めて重箱に詰められます。さらに正月三が日は家事から解放するという意味を含め、おせち料理は保存の効く食材が中心のものになったといわれています。また正月に火を使う事をできるだけ避ける、という物忌みの意味も含んでいます。

ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」は正月を一つの例として、日本人の特別な文化を紹介しています。特別な意味を持たせた料理をきれいなお重に詰め、新年の神を迎えるために餅つきをするなどを通して家族や地域のきずなを強める事が古くから伝わる日本人の大切な文化となっています。

同じく正月に食べる雑煮は、武士の習慣の名残です。雑煮は武士にとって一番大切な正式の肴で、正月には必ず餅の入った雑煮とお屠蘇が供されます。鏡餅などの丸い餅は神の魂の象徴とされます。 1月11日に食べる鏡餅は「歯固め餅」とも呼ばれ、正月の最後に鏡餅を食べて歯を丈夫にするという意味があり延命長寿への願いが込められています。そしてお屠蘇は薬酒の一種で、「屠蘇」という字には「邪気を屠り魂をよみがえらせる」という意味があり、健康を願って飲まれます。正月は、お飾り、雑煮、初詣などのひとつひとつに祈りや願いを込めてハレの日を迎え祝う行事です。

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